人材定着と信頼型組織づくりの伴走役
企業経営カウンセラー® 岩出優です。
「お客様対応のことだから、
現場で何とかしてほしい」
カスハラの相談を受けたとき、
経営者や管理職の方が、
ついそう感じてしまうことは
ないでしょうか。
理不尽な怒鳴り声、
長時間にわたる説教、
土下座の要求、
人格を否定するような暴言。
こうした出来事を
「接客スキルの問題」
「個人の対応力の問題」
「現場でうまく収めるべき問題」
として捉えてしまう企業は、
今も少なくありません。
しかし、この捉え方こそが、
社員を疲弊させ、離職を招き、
ひいては組織全体を
少しずつ蝕んでいく
大きな落とし穴になります。
カスハラは、
対応した社員一人の
問題ではありません。
それは、会社が守るべき
「就業環境」の問題でもあります。
【カスハラを個人の
我慢にしていないか】
たとえば、
ある社員が顧客から
人格を否定するような
暴言を浴び続けたとします。
その場では何とか
笑顔でやり過ごしたとしても、
心の中には深い傷が残ります。
翌日も同じ顧客が
来るかもしれない。
また怒鳴られるかもしれない。
上司に相談しても、
「お客様だから仕方ない」
「もう少しうまく対応して」
「そこは我慢して」
と言われるかもしれない。
そう感じながら
働き続けることは、
安心して働ける職場とは
言えません。
これは単なる
接客の悩みではなく、
社員の心身の安全に
関わる問題です。
【就業環境として
カスハラを捉える】
労働契約法では、
企業は労働者が安全に
働けるよう配慮する義務、
いわゆる安全配慮義務を
負っています。
ここでいう安全とは、
身体的な怪我だけを
指すものではありません。
精神的な健康も含まれます。
顧客からの著しい
迷惑行為を放置し、
社員が強い不安や恐怖を
抱えたまま
働き続けているとしたら、
それは会社として
見過ごしてよい状態ではありません。
もはやカスハラは、
「サービス業だから仕方ない」
「接客業の宿命」
「現場の人が対応するもの」
では済まされない課題です。
企業が組織として向き合うべき、
労務管理上の問題でもあるのです。
【相手が顧客になると、
なぜ我慢になるのか】
もし社内で、同僚や上司から
暴力的な発言を受けたり、
土下座を強要されたり
したらどうでしょうか。
多くの会社では、
ハラスメントとして問題になります。
では、なぜ相手が
顧客になった途端に、
「我慢すべきもの」
「仕事だから仕方ないもの」
になってしまうのでしょうか。
社員を守る基準は、
加害者が誰であるかによって
変わるべきものではありません。
相手が上司でも、同僚でも、
顧客でも、
社員の尊厳や安全が
脅かされているなら、
会社として対応する
必要があります。
もちろん、すべてのクレームを
カスハラと決めつける
必要はありません。
正当な意見や改善要望に
耳を傾けることは大切です。
また、取引という関係上、
難しい側面もあるのは
確かです。
ただし、人格否定、威圧、
長時間拘束、過剰な要求、
謝罪の強要などがある場合には、
会社として線引きを
しなければなりません。
【会社の姿勢が、現場の安心感をつくる】
人事・総務・管理職の立場で
必要になるのは、カスハラを
「現場の対応問題」から
「会社が守るべき就業環境の問題」
へと捉え直すことです。
そのために必要なことは、
特別なことばかりではありません。
対応マニュアルを整備する。
相談窓口を設ける。
カスハラに該当する
行為の基準を明確にする。
現場任せにせず、
管理職が判断を引き受ける。
必要に応じて、
顧客に対して毅然とした対応を取る。
こうした会社の姿勢があるだけで、
現場の安心感は大きく変わります。
社員は、
「何かあったら会社が守ってくれる」
「一人で抱え込まなくていい」
「我慢だけを求められるわけではない」
と感じることができます。
この安心感は、結果的に良質な
顧客対応にもつながります。
不安や恐怖を抱えたままでは、
丁寧な対応を続けることは
難しくなります。
社員が安心して働けるからこそ、
落ち着いて顧客と
向き合うことができます。
【カスハラ対策は、
社員を守るための土台づくり】
カスハラ対策は、単に悪質な
顧客を排除するための
ものではありません。
社員が安心して働ける
環境を整えるための取り組みです。
そして、安心して働ける環境は、
人材の定着にもつながります。
「お客様対応だから
現場で何とかして」
ではなく、
「会社として、
どこまでを許容し、
どこからは守るのか」
この基準を持つことが、
これからの組織には求められます。
カスハラは
接客の問題であると同時に、
就業環境の問題でもあります。
まずは、自社の現場で
どのようなことが起きているのか。
社員が一人で抱え込んでいないか。
相談してもよい空気があるか。
そこから見つめ直していくことが、
社員を守る第一歩になります。
【まとめ】
カスハラを
「現場の接客対応の問題」
として扱い続けると、
社員は一人で抱え込むことになります。
一方で、会社が就業環境の
問題として受け止め、
基準や相談体制を整えることで、
社員は安心して働きやすくなります。
社員を守る姿勢は、
職場への信頼を生みます。
そして、その信頼が
人材定着にもつながっていきます。
カスハラ対策は、
社員を守るための取り組みであり、
同時に、信頼される組織を
つくるための大切な土台です。
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人材定着と信頼型組織づくりの伴走役
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岩出 優(いわでゆう)
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