現場任せのカスハラ対応は、会社への信頼を下げやすい
人材定着と信頼型組織づくりの伴走役
企業経営カウンセラー® 岩出優です。
「お客様対応は現場の判断でお願いします」
このように現場へ任せていながら、
トラブルが起きてから
初めて上司が出てきて、
「なぜもっと早く、
穏便に対応できなかったのか」
と現場を責めてしまう。
こうした対応は、
社員の会社への信頼を
大きく下げる原因になります。
カスタマーハラスメント、
いわゆるカスハラへの対応を
現場任せにしている企業ほど、
社員は
「この会社は自分たちを
守ってくれるのだろうか」
という不安を抱きやすくなります。
カスハラ対策は、
単なる顧客対応の問題ではありません。
社員が安心して
働き続けられる職場をつくるための、
人材定着にも関わる重要な取り組みです。
【現場が本当に求めている
のは「会社の後ろ盾」】
理不尽な要求や暴言を受けたとき、
現場の従業員が最も求めているのは、
「会社は自分を守ってくれる」
という安心感です。
ところが、明確な対応方針も
後ろ盾もないまま、
「お客様の声には
丁寧に対応してください」
とだけ伝えられると、
従業員は一人で
抱え込むことになります。
その場で謝り続ける。
長時間拘束される。
強い言葉を浴びせられる。
ようやく対応が終わった後も、
「もっと上手く対応できたのではないか」
と自分を責めてしまう。
そして最後に残るのは、
「会社は何もしてくれなかった」
という記憶です。
これは、単なる顧客対応の
問題ではありません。
社員が会社を信頼できるか
どうかに関わる、大きな問題です。
【「お得意様だから」で片づけた結果】
ある小売業の現場では、
執拗にクレームを繰り返す
常連客への対応を、長年、
同じ店長個人に任せていました。
本社は、
「お得意様だから」
という理由で、
明確な対応を
取ろうとしませんでした。
その結果、
店長は心身ともに疲弊し、
最終的に退職しました。
問題は、その店長が退職したこと
だけではありません。
残されたスタッフが、
「次は自分が同じ目に遭っても、
会社は助けてくれない」
と感じるようになったことです。
一人の従業員を失ったことも、
大きな損失です。
しかし、それ以上に大きかったのは、
組織への信頼が崩れたことでした。
信頼が崩れると、社員は会社に
本音を言わなくなります。
困ったことがあっても
相談しなくなります。
「どうせ言っても変わらない」
と考えるようになります。
その状態で人材定着だけを
進めようとしても、
なかなかうまくいきません。
問題は、現場の対応力ではなく
「会社の線引き」
現場任せが信頼を損なう理由は、
対応が上手いか下手か
という話だけではありません。
本質的な問題は、
会社としての線引きが
曖昧なことです。
たとえば、
次のような基準は
決まっているでしょうか。
・どのような言動を
カスハラと捉えるのか
・一次対応は誰が行うのか
・どの段階で上司に引き継ぐのか
・対応を打ち切る基準は何か
・記録をどのように残すのか
・警察や弁護士など、
外部機関へ相談する基準はどこか
・被害を受けた従業員への
フォローは誰が行うのか
こうした基準が曖昧なままだと、
判断のすべてが現場の
個人に委ねられます。
その結果、
まじめな人ほど抱え込みます。
責任感の強い人ほど無理をします。
優しい人ほど、
自分を責めて傷ついていきます。
だからこそ、カスハラ対応では、
現場に任せる前に、
会社としての方針を
決めておく必要があります。
方針があるだけで、
現場の安心感は変わる
会社として対応方針を明文化し、
社内に共有しておく。
それだけでも、
現場の安心感は大きく変わります。
「この場合は、上司に引き継いでよい」
「この言動があれば、対応を中止してよい」
「会社として記録を残し、
再発防止につなげる」
こうした基準があることで、
従業員は一人で抱え込まずに済みます。
「自分だけで何とかしなければならない」
という状態から、
「会社として対応してくれる」
という状態に変わります。
この違いは、とても大きなものです。
お客様を大切にすることと、
社員に我慢を強いることは
同じではありません。
社員が安心して
働ける状態をつくることが、
結果として安定した
顧客対応にもつながります。
【対応後のフォローも、信頼を左右する】
カスハラ対応で
見落とされやすいのが、
対応後のフォローです。
被害を受けた従業員に、
「大変だったね」
と一声かける。
対応内容を記録し、
再発防止につなげる。
必要であれば、
産業医面談や相談窓口を案内する。
同じ従業員ばかりに
対応が集中しないよう、
配置や役割分担を見直す。
こうした小さな積み重ねが、
「この会社は社員を見ている」
という安心感につながります。
逆に、何事もなかったかのように
翌日も同じ持ち場に戻されるだけでは、
心は少しずつ折れていきます。
社員は、会社の言葉だけを
見ているわけではありません。
困ったときに、
会社がどう動くのかを見ています。
【カスハラ対応は、会社の姿勢を映す】
カスハラ対応は、
顧客対応であると同時に、
従業員に対する会社の姿勢を映します。
「お客様を大切にすること」と、
「社員を犠牲にすること」は違います。
お客様を大切にする
会社であるためにも、
社員が安心して働ける環境を
整える必要があります。
現場の踏ん張りに
頼り続けるのではなく、
組織として社員を守る仕組みを整える。
その一歩は、自社の現状を
把握することから始まります。
どのような場面で現場が困っているのか。
どこまでを個人対応にしているのか。
上司や会社が前に出る基準は
決まっているのか。
対応後のフォローはできているのか。
こうした点を見直すことが、
カスハラ対策であり、
人材定着の土台づくりにも
つながります。
社員が安心して働ける職場は、
社員から信頼される職場です。
そして、信頼される会社には、
人が残りやすくなります。
【お読みいただいた方へ】
ここまでお読みいただき
ありがとうございました。
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人材定着と信頼型組織づくりの伴走役
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岩出 優(いわでゆう)
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