人材定着と信頼型組織づくりの伴走役
企業経営カウンセラー® 岩出優です。
「人が足りないので、とにかく
募集をかけましょう」
現場で、このような会話が
交わされることは少なくありません。
私も企業支援の現場で、
こうした場面に何度も
立ち会ってきました。
求人媒体に30万円、
50万円とお金を投じる。
紹介会社を使って、
年収の30〜50%を支払う。
採用には、それだけ
大きなコストがかかります。
それにもかかわらず、
「結局、どのような人材を
採用したかったのでしょうか」
という問いに、
明確に答えられない会社は
意外と少ないものです。
採用がうまくいかない背景には、
求人媒体の選び方や
求人原稿の書き方だけではなく、
採用活動を始める前の
準備不足が関係している
ことがあります。
採用がうまくいかない
会社に共通すること
採用がうまくいかない会社には、
ある共通点があります。
それは、
「採用活動を始める前に決めるべきこと」
を決めずにスタートして
しまっていることです。
求人媒体を選ぶ。
求人原稿をつくる。
紹介会社に依頼する。
もちろん、これらも大切です。
ただ、その前にもっと手前で
考えておくべきことがあります。
それが、次の三つです。
「なぜ採るのか」
「誰を採るのか」
「自社の何を伝えるのか」
この三つの問いが
曖昧なまま採用活動を始めると、
採用の軸がぶれやすくなります。
「とりあえず募集」が
採用コストを増やす
三つの問いが揃っていないまま
採用活動を始めると、
負のループに入りやすくなります。
応募者は来た。
でも、なんとなく違う。
面接はした。
でも、決め手に欠ける。
ようやく入社した。
でも、本人が
「思っていたのと違う」
と感じてしまう。
結果として、早期離職につながり、
また採用コストがかかる。
これが採用における
負のループの典型です。
採用がうまくいかない原因は、
求人媒体の力不足だけではありません。
会社の知名度の低さだけでもありません。
そもそも、
誰に何を届けたいのかが
曖昧なまま走り出していることが、
大きな原因になっている場合があります。
少し立ち止まって言語化すれば、
求人原稿も面接も選考基準も変わります。
しかし、実際にはこのひと手間を
面倒に感じてしまう
会社も少なくありません。
けれども、
その少しの「面倒くさい」が、
結果として大きな採用コストに
つながってしまうのです。
「営業を一人」では、まだ曖昧すぎる
たとえば、
「営業を一人採りたい」
という相談があったとします。
一見すると、
採用したい職種は明確に見えます。
しかし、もう少し深く考えると、
必要な人物像はまったく変わってきます。
新規開拓のエースが欲しいのか。
既存顧客を守ってくれる
安定型が欲しいのか。
将来の幹部候補として育てたいのか。
現場を支える実務型の人材が欲しいのか。
同じ「営業」でも、
求める人材像は大きく違います。
ここを曖昧にしたまま、
「コミュニケーション能力が高い人」
「明るく前向きな人」
「やる気のある人」
と書いても、
なかなか候補者の心には届きません。
なぜなら、
こうした表現は抽象的であり、
多くの会社が同じように
使っている言葉だからです。
一方で、求める人物像が
具体的に言語化されている求人は、
「これは自分のことかもしれない」
と感じてくれる
候補者に届きやすくなります。
形容詞が出てきたら、
具体的な場面に置き換える
求人を研ぎ澄ます上でのポイントは、
形容詞が出てきたら、
具体的な場面を考えることです。
たとえば、
「明るく前向きな人」
といっても、人によって
思い浮かべる姿は違います。
人が集まる場所で、
物怖じせずに発言できる人。
人と会うときに、
自分から挨拶できる人。
困難な場面でも、
ネガティブな発言ばかりしない人。
周囲の空気を重くせず、
建設的に考えられる人。
このように、
実際の場面に置き換えることで、
求める人物像が
はっきりしていきます。
「コミュニケーション能力が高い人」
も同じです。
初対面の相手と
会話を広げられる力なのか。
お客様の話を丁寧に聴ける力なのか。
社内で報告・連絡・相談を
適切にできる力なのか。
相手の意図をくみ取り、
確認しながら進められる力なのか。
一言で「コミュニケーション能力」
といっても、必要な力は
職場や役割によって変わります。
だからこそ、
抽象的な言葉で止めずに、
具体的な行動や場面まで
落とし込むことが重要です。
中小企業こそ、自社の強みを言語化する
採用で忘れてはいけないのが、
「自社の強みの言語化」です。
採用は、
企業が人を選ぶ場で
あると同時に、
人から選ばれる場でもあります。
特に中小企業の場合、
給与や福利厚生といった
条件勝負では、
大手企業にかなわない
ことも多いでしょう。
だからこそ大切なのは、
「うちで働くと、
どんな未来が手に入るのか」
を語れることです。
たとえば、次のような問いがあります。
どんな成長ができるのか。
どんな人と働けるのか。
どんなお客様に貢献できるのか。
どんな価値観を
大切にしている会社なのか。
どんな働き方を目指しているのか。
こうしたことが
言語化されていると、
条件だけでは伝わらない
魅力が伝わります。
人は条件だけで動くわけではありません。
最後に心を動かすのは、
「この会社で働いてみたい」
「この人たちと一緒に働きたい」
「ここなら自分らしく力を発揮できそうだ」
という未来のイメージと感情です。
採用にも、信頼型の発想が必要になる
現代の採用では、
圧力を土台にした
「働かせてやる」
という発想ではなく、
信頼を土台にした
「一緒に働きたい」
というメッセージが大切になります。
時代の流れとともに、
組織のあり方や人の動かし方も、
圧力型から信頼型へ移ってきています。
それでも、まだ圧力を前提に
人を動かそうとする
会社は少なくありません。
会社が一方的に
働き手を選ぶのではなく、
働き手からも選ばれる。
この前提に立つことが、
これからの採用では
ますます重要になります。
そのためには、
自社の考え方や働く環境を、
誠実に伝える必要があります。
ただし、ここで注意したいのは、
良いところだけを並べれば
よいわけではないということです。
会社の課題や、
これから整えていく
必要があることも含めて、
正直に伝えることが
信頼につながる場合があります。
もちろん、
「うちの会社はここが
ダメなんです。以上です」
で終わってしまえば、
応募者は不安になります。
大切なのは、課題だけでなく、
未来に向けた方向性も
一緒に伝えることです。
たとえば、
「まだ教育体制は十分ではありません。
ただ、今後は入社後の
フォロー面談や育成計画を
整えていく予定です」
「現場は忙しい時期もあります。
その分、チームで助け合う
体制づくりを進めています」
このように、現実と未来を
セットで伝えることで、
誠実さが伝わります。
採用は、きれいな言葉で
会社を飾ることではありません。
自社の現実と未来を言語化し、
そこに共感してくれる人と
出会うための活動です。
求人を出す前に、紙一枚で考えてみる
まずは、求人を出す前に、
紙に次の三つを書き出してみてください。
「なぜ採るのか」
「誰を採るのか」
「自社の何を伝えるのか」
完璧な文章にする必要はありません。
最初は箇条書きで十分です。
ただ、この三つを考えるだけで、
求人原稿の言葉は変わります。
面接で聞く質問も変わります。
採用するかどうかの
判断基準も変わります。
そして結果的に、
入社後のミスマッチも減っていきます。
採用は、求人を出してから
始まるのではありません。
求人を出す前に、どれだけ
自社の考えを明確に言語化できるか。
そこに、採用の成否を分ける
大きなポイントがあります。
お読みいただいた方へ
最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
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人材定着と信頼型組織づくりの伴走役
企業経営カウンセラー®
岩出 優(いわでゆう)
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