· 

正しいことを言っているのに、人が動かない理由

正しいことを言っているのに、

人が動かない理由|限定合理性

 

「何度言っても伝わらない」

 

「正しいことなのに、

なぜ動いてくれないのか」

 

現場のマネジメントに関わる方なら、

一度はそう感じたことが

あるのではないでしょうか。

 

経営者や上司の立場からすれば、

伝えている内容は間違っていない。

 

むしろ、会社のため。

そして本人のためを思って伝えている。

 

それなのに、

スタッフの表情はどこか曇っている。

行動もなかなか変わらない。

 

この温度差は、いったいどこから

生まれているのでしょうか。

 

人は、いつでも合理的に

判断できるわけではない

 

人は、いつでも冷静に、

合理的に、正しい判断ができる

生き物ではありません。

 

経済学や経営学の世界では、

こうした考え方を

「限定合理性」と呼びます。

 

少し難しく聞こえるかも

しれませんが、要するに、

人は次の三つに大きく縛られながら

意思決定をしている、

ということです。

 

・手元にある情報

・残された時間

・そのときの感情

 

つまり、人はすべての情報を集め、

十分な時間をかけ、

感情に左右されずに判断している

わけではありません。

 

限られた情報の中で。

限られた時間の中で。

そのときの感情を抱えながら。

 

なんとか判断し、行動しているのです。

 

現場には、経営層とは

違う制約がある

 

特に現場で働くスタッフ

一人ひとりにとって、

この三つの制約は経営層よりも

強くのしかかっている

ことがあります。

 

たとえば、

朝礼で上司がこう伝えたとします。

 

「お客様目線で動こう」

「もっと主体的に提案しよう」

 

言葉としては正しい。

誰も反論できない内容です。

 

けれど、現場のスタッフの

頭の中はどうでしょうか。

 

目の前の業務をさばくのに精一杯。

 

さっき受けたクレーム対応の

余韻が残っている。

 

後輩のフォローも気になっている。

 

今日中に終わらせなければ

ならない作業もある。

 

そんな状態で「主体的に」

と言われても、

その言葉を受け止めるための

心の余白が残っていない

ことがあります。

 

正しい言葉が届かないのは、

相手がやる気がないから

とは限りません。

 

その言葉を受け取れる

状態ではないだけ、

ということもあるのです。

 

感情が、正論の受け止め方を

変えてしまう

 

さらに厄介なのが、感情の制約です。

 

人は、納得していない相手の言葉を、

たとえ正しくても

素直に受け取れないことがあります。

 

日頃から自分の頑張りを

見てもらえていない。

 

困っていることを

分かってもらえていない。

 

評価されていない。

 

そう感じている人にとって、

上司の正論は、

単なる正しい情報としては届きません。

 

「また上から言われた」

「現場のことを分かっていない」

「結局、こちらに

負担を押しつけるだけだ」

 

そんな負の信号として

処理されてしまうことがあります。

 

つまり、人は情報そのものだけを

受け取っているわけではありません。

 

誰から言われたのか。

どんな関係性の中で言われたのか。

自分の状況を分かったうえで

言ってくれているのか。

 

そうした背景によって、

同じ言葉でも受け止め方は

大きく変わります。

 

正しさだけでは、人は動かない

 

だからこそ、「正しさ」を

伝えるだけでは人は動きません。

 

むしろ、正しいことを

正しく言えば言うほど、

相手の心が閉じてしまう

ことさえあります。

 

これは現場でよく見られる風景です。

 

経営者や上司は、

会社全体のことを考えている。

 

スタッフは、

目の前の業務や人間関係、

感情を抱えながら働いている。

 

どちらかが間違っている

わけではありません。

 

ただ、見えている

景色が違うのです。

 

経営者側の論理と、

スタッフ側の感情の間には、

想像以上に深い溝があります。

 

その溝を見ないまま

正論だけを届けようとすると、

言葉は届くどころか、

かえって反発を生んでしまいます。

 

まずは、相手の状況を

聞くことから始める

 

では、どうすればよいのでしょうか。

 

大切なのは、

指示や方針を伝える前に、

一人ひとりが今どんな状況に

置かれているのかを

聞いてみることです。

 

忙しさ。

迷い。

ちょっとした不満。

言葉にしづらい疲れ。

本当は困っていること。

 

そうした小さな声に

耳を傾けるだけで、

同じ言葉でも

届き方は変わります。

 

もちろん、すべての不満に

応える必要はありません。

すべての希望を

叶えることもできません。

 

ただ、

「自分の状況を分かったうえで

言ってくれている」

と感じられるかどうか。

 

ここが、人が動くかどうかの

分かれ目になります。

 

正しさを通す前に、

心の余白をつくる

 

マネジメントでは、

どうしても「何を伝えるか」に

意識が向きがちです。

 

けれど、本当に大切なのは、

その前に

「相手が受け取れる状態にあるか」

を見ることです。

 

正しさを通す前に、

相手の心の余白をつくる。

 

遠回りに

見えるかもしれません。

 

しかし、相手の状況を聞き、

感情を受け止め、

関係性を整えたうえで

伝えるからこそ、

 

正しいことがようやく

相手の中に入っていきます。

 

人は、正しいから

動くのではありません。

 

自分の状況を分かってもらえた。

自分のことを見てもらえている。

この人の言葉なら

受け取ってみよう。

 

そう感じたときに、

少しずつ動き始めます。

 

正論を伝えることは大切です。

 

ただ、その正論が届くためには、

相手の情報、時間、感情の

制約に目を向けることが

欠かせません。

 

人が動かない理由は、

能力や意欲の問題だけ

ではありません。

 

その人なりの

限定合理性の中で、

精一杯判断している。

 

そう捉えることができたとき、

マネジメントの言葉は

少しずつ変わっていく

のではないでしょうか。

 

 

お読みいただいた方へ

 

今日もお読みいただき、

ありがとうございました。

 

組織の人材定着力を

高める上で役に立つコンテンツを、

6つのメール講座として

学べるようにしました。

 

①信頼型マネジメント

②ココロの理解

③対話術

④ハラスメント対策

⑤採用の土台づくり

⑥人事制度構築

 

並行登録、

途中解除などはご自由にしていただけます。

 

内容についてはこちらからご覧ください。

 

https://x.gd/vx43U

 


人材定着と信頼型組織づくりの伴走役

 企業経営カウンセラー® 

岩出 優(いわでゆう)

 

【メルマガでも情報発信中】

信頼で人が定着し、

無理なく続くココロマネジメント®通信

https://www.reservestock.jp/subscribe/302815