なぜ、制度を作っても使われないのか
行動デザインの視点で考える
評価制度、1on1、社内表彰、
資格取得支援、研修制度、相談窓口。
会社には、
社員の成長や働きやすさを
支えるための
さまざまな制度があります。
しかし、せっかく制度を
作ったにもかかわらず、
気づけば誰も使っていない。
運用されているように見えても、
実態としては形だけになっている。
そんな状態になっている
会社も少なくありません。
人事や総務の方からは、
「制度はあるのに、
現場の意識が足りなくて
活用されない」
という声を聞くことがあります。
たしかに、そう感じたくなる
場面もあると思います。
ただ、制度が使われない理由を
「現場の意識の問題」として
片づけてしまうと、同じ失敗が
繰り返されやすくなります。
なぜなら、人が動かない原因は、
意識の低さではなく
「動きにくさ」にあることが
多いからです。
制度は、作っただけでは使われない
制度を作るとき、多くの場合、
目的そのものはとても大切です。
評価制度であれば、
社員の頑張りを適切に評価すること。
1on1であれば、
上司と部下が対話する
時間をつくること。
社内表彰であれば、
良い行動や成果を
見える形で承認すること。
資格取得支援であれば、
社員の成長を後押しすること。
どれも、組織にとって
必要な取り組みです。
しかし、目的が正しくても、
制度が自然に使われるとは
限りません。
たとえば、1on1制度を
導入したとします。
上司と部下が定期的に話すことで、
日頃の悩みや課題を共有し、
成長支援につなげる。
趣旨としては、
とても良い制度です。
ところが実際には、
忙しい時期に後回しになり、
実施頻度が下がり、
気づけば半年に一度の面談
のようになってしまう。
あるいは、
実施はしているものの、
形式的な確認だけで
終わってしまう。
こうしたことは珍しくありません。
このとき、すぐに
「上司の意識が低い」
「現場が本気で取り組んでいない」
と考えてしまうと、
問題の本質を見誤る
ことがあります。
使われない制度には「摩擦」がある
制度が使われない背景には、
たいてい小さな摩擦があります。
たとえば、1on1であれば、
実施記録のフォーマットが面倒。
いつ実施するかが
各自任せになっている。
話すテーマが決まっていない。
実施後に何をすればよいか
分からない。
忙しいときに
思い出すきっかけがない。
こうした小さな
引っかかりがあるだけで、
人は行動しにくくなります。
資格取得支援制度でも同じです。
制度はあるけれど、
申請方法が分かりにくい。
対象資格がどこに
書いてあるか分からない。
誰に相談すればよいか分からない。
承認までに時間がかかる。
上司に言い出しにくい
雰囲気がある。
このような状態では、
制度があっても使われません。
人は、面倒なものを後回しにします。
これは怠慢ではなく、
ごく自然な反応です。
だからこそ、制度設計では
「どうすれば社員の意識が高まるか」
だけでなく、
「どこで行動が止まっているのか」
を見る必要があります。
行動デザインとは何か
ここで大切になるのが、
行動デザインという考え方です。
行動デザインとは、
人が自然に望ましい行動を
取りやすくなるように、
環境や導線を設計することです。
人に気合いや根性を
求めるのではなく、
動きやすい流れをつくる。
迷わず使えるようにする。
思い出せるきっかけをつくる。
手間を減らす。
すでにある業務の
流れに組み込む。
こうした工夫によって、
制度は使われやすくなります。
たとえば、
社内表彰制度を作ったとしても、
社員が毎回専用フォームを探し、
理由を長文で入力し、
承認者を選び、
申請しなければならないとしたら、
なかなか続きません。
一方で、
朝礼や週次ミーティングの中で
「今週助けられた人」を
一言共有する時間があれば、
感謝や承認は自然に
生まれやすくなります。
新しい行動を増やすのではなく、
すでにある行動に乗せる。
これが、制度を現場に
根づかせるうえで重要な視点です。
使われる制度は、
日常業務の中に組み込まれている
自然と使われる制度には、
共通点があります。
それは、
制度を使うタイミングが
日常業務の流れに
組み込まれていることです。
たとえば、
研修受講の希望を
社員に出してもらいたい場合、
社員が自分で制度を思い出して
申請するのを待つだけでは、
なかなか活用されません。
しかし、
評価面談やキャリア面談の中で、
「今後学びたいことはありますか」
「受けてみたい研修や
資格はありますか」
と確認する項目を入れておけば、
制度を使うきっかけが
自然に生まれます。
1on1も同じです。
「毎月実施してください」
と伝えるだけでは、
忙しさの中で後回しになります。
しかし、あらかじめ
カレンダーに予定を入れておく。
話すテーマを
簡単に選べるようにしておく。
記録は数分で終わる内容にする。
次回の確認事項だけを
残せるようにする。
こうした設計があれば、
実施のハードルは下がります。
制度は、社員の意識だけで
動くものではありません。
行動しやすい導線が
あるからこそ、
現場で使われるようになります。
ゲームが続く理由から学べること
行動デザインを考えるうえで、
ゲームはとても分かりやすい例です。
ゲームが人を熱中させるのは、
プレイヤーに強い意志を
求めないからです。
次に何をすればよいかが分かる。
押すボタンが目の前にある。
行動すると、
すぐに反応が返ってくる。
少し進むと、
次の目標が見えてくる。
だから、
人は自然と続けてしまいます。
仕事の制度も、
この設計に近づけることができます。
次に何をすればよいか分かる。
どこから始めればよいか分かる。
入力や申請が簡単である。
行動した結果が見える。
次のアクションにつながる。
こうした要素がある制度は、
現場に根づきやすくなります。
反対に、目的は立派でも、
使い方が分かりにくく、
手間が多く、
反応が返ってこない制度は、
少しずつ使われなくなっていきます。
制度が形骸化する原因は、
現場だけにあるわけではない
制度が使われないとき、
つい現場の責任にしたくなる
ことがあります。
「もっと主体的に使ってほしい」
「管理職がちゃんと運用してほしい」
「社員の意識を高めたい」
そう考える気持ちは分かります。
しかし、制度が使われない原因は、
現場だけにあるとは限りません。
むしろ、
制度を使うまでの導線が複雑だったり、
日常業務から切り離されていたり、
使った後の効果が
見えなかったりすることのほうが
大きい場合があります。
制度は、
作ることが目的ではありません。
使われて、行動が変わり、
組織に良い変化が生まれて、
はじめて意味があります。
そのためには、
制度の中身だけでなく、
制度を使う人の動きに
目を向ける必要があります。
まずは「使われていない制度」
を一つ見直す
制度を見直すときは、
難しく考えすぎる必要はありません。
まずは社内で、
使われていない制度を
一つ取り上げてみてください。
そして、
その制度を使う人の行動を、
最初から最後まで
紙に書き出してみます。
どこで制度を知るのか。
どのタイミングで使うのか。
誰に相談するのか。
どの書類を書くのか。
誰の承認が必要なのか。
どれくらい時間がかかるのか。
実施後に何が起きるのか。
この流れを書き出すだけでも、
制度が止まっている場所が
見えてきます。
申請が面倒なのかもしれません。
承認の段階が
多すぎるのかもしれません。
使うタイミングが決まっていない
のかもしれません。
制度の存在を思い出す
きっかけがないのかもしれません。
あるいは、
使っても何も変わらないと
感じられているのかもしれません。
意識を責める前に、導線を見直す
制度が使われないとき、
最初に見るべきなのは
「意識」ではなく「導線」です。
人が動きにくい
設計になっていないか。
手間が多すぎないか。
迷う場所がないか。
日常業務の流れから外れていないか。
使った後の反応があるか。
こうした点を見直すことで、
制度はもう一度動き出します。
制度は、
作っただけでは機能しません。
人が自然に使えるように設計されて、
はじめて現場に根づきます。
そして、現場に根づいた制度は、
社員の行動を変え、
組織の文化を少しずつ
変えていきます。
意識を責める前に、
導線を見直す。
それが、制度を
「あるだけのもの」から
「使われるもの」へ変える
第一歩です。
お読みいただいた方へ
今日もお読みいただき、
ありがとうございました。
組織の
人材定着力を高める上で
役に立つコンテンツを、
6つのメール講座として
学べるようにしました。
1. 信頼型マネジメント
2. ココロの理解
3. 対話術
4. ハラスメント対策
5. 採用の土台づくり
6. 人事制度構築
並行登録、途中解除などご自由にどうぞ。
内容についてはこちらからご覧ください。
人材定着と信頼型組織づくりの伴走役
企業経営カウンセラー®
岩出 優(いわでゆう)
【メルマガでも情報発信中】
信頼で人が定着し、
無理なく続くココロマネジメント®通信

コメントをお書きください